目覚まし機世界旅行
真琴の場合
それは、名雪とヴェネツィアにいった話をしているときだった。
嬉しそうにレースのハンカチを見せつける名雪に「羨ましい」オーラ全開のあゆと真琴。
「ねぇねぇ。どうしてヴェネツィアに行けたの?」
あゆの質問に名雪も首をかしげる。
「なんでだろう…?
けど、あの目覚ましに別の地名を行ったらもしかしたら行けるのかもね♪」
適当に言った名雪の一言に、
「ぼく、地図持ってくる!」
「あぅー!真琴も〜!」
しっかり真に受けた二人だった。
その日の夜中。
ぎし…ぎし…ぎし…
案の定、誰かやってきた。
こんな夜中にやってくるのは多分…
「ふふっ…見てなさいよ…祐一……」
やっぱり、真琴だった。
寝たふりをしてじっと様子をうかがう。
真琴は目覚まし時計を取って、地図を見つめる。
「あった。あった。スリランカの…」
待て。真琴。
もしかして、あれを言うのか!?
ああ。言えたら。つれてってやるとも。
俺だって最初言えなかったんだ。
そんな名前があるなんて信じられなかったんだからな。
気づかれないように全神経を真琴の方に向ける。
そして、真琴は目覚ましの録音ボタンを押す。
「祐一。朝だよ。朝ご飯を食べてスリジャヤワルダナラプラ…あう〜〜!!!」
必死に笑いを噛み殺しながら思う。
(やっぱり舌噛みやがった…)
スリジャヤワルダナプラコッテ
スリカンカの首都。
茶目っ気な地理教師がよく出題し、小中学生の早口言葉になる街。